Editorial / まえがき
DOI:
https://doi.org/10.12775/5155Abstract
第二部では、芸術的・文芸的なコンテクストとその関連性に焦点をあてた。十九世紀末期のヨーロッパで日本の芸術は非常な関心を集めた。また、一九〇〇年のパリ万国博覧会の際、日本の芸術を展示した日本館も開かれた。浮世絵や日用品などが本格的に見直され、演劇にも関心が寄せられた。当時、欧米巡業中だった川上音二郎一座による芝居も好評を博し、大成功を収めた。「芸術公使」と称えられた日本の芸人一行の欧州巡業は、舞台芸術をめぐる論争を引き起こし、ポーランドの新聞や雑誌においても(ヤン・アウグスト・キシェレフスキの寄稿等で)盛んに取り上げられた。川上らの物まね芸や音楽、舞踊は、ポーランドの舞台芸術を新たな発展段階に引き上げる役割を果たすことにもなった。さらには、フェルディナンド・アントニ・オッセンドフスキ、ユリアン・ファワトらの旅行家、流刑囚のヴァツワフ・シェロシェフスキらが、東アジアの日常生活や歴史を探訪したのを機に、ヨーロッパと日本文化の遭遇は不可避となった。本節に掲載した六つの論文は、両文化が接近していく過程とその意義を明らかにするものである。「イェジー・グロトフスキとタデウシュ・カントルの日本」という論文では、日本とポーランド両国の芸術・思想的な関係について興味深い考察がなされている。そこでは、この二人の劇作家の舞台演出がどう影響を受けたのか、日本の芝居に劇作家はいるのかなどについて言及されている。歌舞伎と能楽の伝統芸については、『生写朝顔日記』のポーランド語訳に関する論文、ならびにヴワディスワフ・レイモント著の『小紫』について触れた論文で俎上に載せられている。また、浮世絵が新芸術闘争にどのような影響を与えたのかなどを掘り下げた論文、フェルディナンド・アントニ・オッセンドフスキのルポルタージュについて考察した論文はいずれも、日ポ関係のイメージを浮かび上がらせてくれる。そして、ヒロミ・ゴトー著の『キノコの合唱』を取り上げた論文では、伝統と現代性の相克、文化意識における東洋と西洋の対峙という問題が提示されている。Downloads
Published
2014-12-30
How to Cite
1.
BEDNARCZYK, Adam, KOŁOS, Sylwia and RATUSZNA, Hanna. Editorial / まえがき. Litteraria Copernicana. Online. 30 December 2014. Vol. 14, no. 2, pp. 6-11. [Accessed 2 December 2024]. DOI 10.12775/5155.
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